2017年 夏号
- 雉蓆 望月 綾乃
- 冴えかへる夜の大雪なほしろく富士の山肌(やまはだ)太らせてゐむ
- さくら咲く便りをよそに降りつもる春雪(しゆんせつ)ここに後前(あとさき)なきや
- 微細なる枝あまさずに光らせて昼には消ゆる泡沫(うたかた)の雪
- 雪止んでひかりかがやくただ中にわけても富士の白金(はくきん)の彩(いろ)
- 庭のおく小岩のかげにけだものの口まぬがるる蕗の薹(たう)あり
- 残さるる二つばかりの蕗の薹愛(を)しみつつ摘む今し背をまげ
- 一点の曇りなきそらあはあはと暮れ沈めゆく富士の白妙(しろたへ)